和子の生い立ち-62〜結納〜

ある日、おしげさんは正木屋の前まで来て和子を呼び止め
「結納のお飾りを買うんだけど、正木屋さんでは先方の目録を全部
教える事に成るから嫌だろう?他の結納屋さんで買うね?」って
田辺さんで結納のお飾りを買って自宅に届けて下さいました。
その結納飾りはお粗末なお飾りでがっかり・・・
君子や兄ちゃんのお飾りは昆布巻きの台にスルメで亀が・・・
水引で松竹梅、亀の向かいに鶴が飾られ、床の間に綺麗に置かれて居たのに・・・
和子の結納飾りは殆どなく白塗りの台に紅白の紙が敷かれ和紙に書いた目録
乗ってるだけ?(何だ〜これは???)
結納金の10万円と目録、婚約指輪と扇子がある筈なのに・・・
指輪も無ければ扇子も印だけのおもちゃ?
式場で結婚式を挙げるのは兄姉中で和子だけだし婚約指輪が無い事も
左程ショックでは有りませんでした。勇ちゃん言わく
「秋山君は真面目で社長に気に入られて会社全てを任されて頑張って居る」と
その言葉を信じて・・・
目録を見ると両親に8人の兄弟の名前がずらりと・・・
東京でご両親と8人の兄弟・長男の子供が2人
どんな立派な大きなお家だろうと想像も付きませんでした。


彼から頂いた10万円の結納金でおしげさんに連れられて京都まで買い物に・・・
和服、黒の紋付・夏・冬用2セット・折角だから中振袖の着物を・・・と
今まで「何々を買って欲しい」と言っても中々買って貰えず悔しい思いを
散々しましたが、今回は和子が欲しいと言う物は何でも買って呉れる。
又ご近所や親せきからお祝いだから・・・色んな物をかーこに・・・って
束の間の最高の幸せでした。