兄やんは和子が家に居る頃から病気らしい病気もせずに健康其の物でした。
我が家の家計は父も2人の兄も姉の旦那様も誰もお酒を飲まず、
飲むのは和子の夫だけでした。ですが夫は煙草は全然吸いませんが、
父も2人の兄も煙草は欠かせない人でした。
「煙草は脳を侵され、お酒は内臓を侵される」と聞いた事が有りますが、
まさしく兄やんは70歳を過ぎた頃に脳梗塞に・・・
聞く所に依ると兄やんは将棋が好きで、バイクで将棋を差しに知り合いのお宅に行って帰りに異変を感じ、バイクを乗り捨てて帰って来たそうです。
兄ちゃんのお宅に行って・・・「わし~脳梗塞に成った見たい?」って言い・・・
兄ちゃんが「ほら~あかんでや~医者さんに行こう」と言って兄ちゃんの車で
病院へ・・・病院に着くと。看護師さんは「お名前と病状を記入して下さい」と
紙とペンを下さいます。其処で兄ちゃんが「兄やん名前と病状を書くんやて~」と
促すと、兄やんは「字が書けない」と言われびっくり・・・
先生に問診を受けると「脳梗塞で貴方は間脳を侵されて居ます。即入院を・・・」と・・・当時、脳梗塞と聞けば半身不随に・・・に成るのが定番の様ですが
右脳を侵されると左半身不随・左脳を侵されると右半身不随に成るそうですが
兄やんの場合は間脳を侵されて、字を書く事も、記憶力も・判断力も全て失い
廃人同然の様です。其れでも身近に居る女房や子供・兄弟は分かる様ですが
遠く離れた和子の事は???
昔の事を思い出し、和子の事を話したくても和子の名前が思い出せず
「あの子よ~あの子~あの子何て言うたっけ?」「あ~か~こか?」そうそう
「か~こよ~」って感じで・・・一つの文句も一行覚えられないとか?
その様な廃人同然に成った兄やんも若い頃は町内の役員を遣ったり~
長男だけに立派な兄やんだったのに・・・
兄やんにも3人の娘が居ますが、娘たちも「立派なお父ちゃんの面影は無く悲しいと・・・そんな兄やんのお嫁さん、姉さんもかなり大きなショックを受けて
或る日、突然「ポ~ン」と耳が聞こえなく成って・・・夫婦でチグハグ・・・
兄やんが喋っても姉さんには聞こえない?筆談でお話しも字が書けない・・・
世の中にこの様な気の毒なご夫婦が居るのかな?
【なれそめを 初めて聞いた 通夜の晩(シルバー川柳)】