《和子は又々こんな記事を見た~》
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パニックに陥った30代女性が、その後、
自分を取り戻すまでの一部始終
国家資格の公認心理師として日々、メンタルケアの現場でカウンセリング
を行う舟木彩乃さんは、過去に国会議員秘書として働いた経験があります。
仕事は多かれ少なかれストレスがあるものですが、国会議員秘書は
ストレスチェックの結果を見ても、かなりストレスが多い仕事で、
メンタルを病む人が多かったと言います。 そうした経験から
ストレスマネジメントの研究をするようになった舟木さんが提唱するのが
「首尾一貫感覚」。把握可能感、処理可能感、有意味感です。本稿では、
『ある日、突然に始まった「上司からの嫌がらせ」に、30代の男性がとった
「驚きの方法」』に引き続き、「首尾一貫感覚」のなかから有意味感を高める
方法について、実例をあげながら具体的に解説します。
母が「末期がん」と宣告された加藤さん
ここからは、実際にあった相談内容をもとに、「有意味感の高め方」に
ついてお伝えしていこうと思います。 加藤さん(仮名/30代女性)の例を
ご紹介しましょう。加藤さんは、私の知るかぎり、首尾一貫感覚は決して
低くない人です。 しかし、生きていればいろんなつらいこと、
悲しいことが起こります。 事故にあったり、病気になったり、
大切なものを失ったり、離別を味わったり、人生にはさまざまな出来事が
あります。 ある日、60代の母が胸の一部に痛みや違和感があると
言ったので、病院に付き添って行ったところ、乳がんだろうと告げられました。
その後、さらなる精密検査を終えてわかったことは、母のがんは
ステージ4の末期がん、手術は意味がないということでした。残された
方法は体力が続くかぎり、抗がん剤を続けていくことだけだというのです。
次々に聞いた“悪い意味”での想定外な説明に、目の前が真っ暗になって
しまいました。 突然のがん宣告にも母は、一見落ち着いてふるまって
いますが、転移の不安、治療の選択、高齢の体に抗がん剤の副作用
リスクなど、心配ごとは尽きません。私自身、支えなきゃと思いつつも
「どうしていいかわからない」状態です。「想定の範囲外」の出来事が
続いて、何から考えていいのかわからず、混乱しています。
また、外科手術ができず打つ手が少ない状況に「なんとかなる」とも
なかなか思えません。自分を奮い立たせようと、過去の経験を引っ張り出して
きて「なんとかなるだろう」と考えるようにしても、その場で適切な
手段が思い浮かびません。 母とは別々に住んでいたのですが、特段の用が
なくても電話やLINEなどで頻繁にコミュニケーションをとっている関係です。
だからか、「どうしてこんなことになったのだろう。もっと早く気づいて
あげられたら……」などと、堂々巡りで考えてしまいます。「どうして
こんなことに。母のこの病気になんの意味があるのか」と思えてしかた
ありません。私はこれからどうしたらいいのでしょうか。
このご相談から、普段は首尾一貫感覚が高めの加藤さんですが、
突然のお母様の末期がん宣告という状況に、首尾一貫感覚が低くなって
しまっていることがわかります。「把握可能感」も「処理可能感」も
低くなってしまっており、「なんとかなる」とはどうしても思えない状況です。
このような強いストレスのある状況で、加藤さんはどうしたら
いいのでしょうか。 加藤さんの先ほどのお話には続きがあります。
「今度は自分が母に恩返しする番だ」
加藤さんはある晩、今まで貯めてきたお気に入りのショップやレストランの
スタンプカード(来店ごとにポイントが貯まるカード)を破ってゴミ箱に
捨てているお母様の後ろ姿を見たそうです。 声をかける雰囲気では
なかったけれど、目が離せない光景だったとのこと。加藤さんのお母様は、
もうスタンプを最後まで貯めることはないと思ったのかもしれませんし、
期限がついているものを身のまわりに置きたくなかったのかもしれません。
加藤さんは、「母のこの姿を一生涯忘れないだろう」と思いながら眺めて
いましたが、突然ハッと我に返りました。 彼女はそのとき「今度は自分が
母に恩返しする番だ」という思いにいたったそうです。恩返しすることが、
母の治療のためにできるだけのことをする意味(有意味感)だと感じたのです。
そこから加藤さんは、「自分に何か少しでもできることはないか」と思い、
本を読んだり知識をつけたりして(把握可能感)、抗がん剤に耐えられるように
レシピを考えた料理を作るなどしていった結果、少しずつ「なんとなかる」と
思えるようになったそうです(処理可能感)。 有意味感をもつことから、
ほかの2つの感覚が回復して高くなっていったいい例といえるでしょう。
有意味感はどんな状況でももつことができる
経験したことがない大きな壁にあたって把握可能感がもてないときも、
どう考えても「なんとかなる」なんて思えなくて処理可能感がもてない
ときにも、有意味感はもてます。
「困難な状況であっても、このことには意味がある」「このことを意味ある
ものにするために私は何をすべきか」という有意味感は、もつことが
できるのです。 例えば、『ストレスを抱えやすい人に圧倒的に足りていない
「3つの対処能力」…元国会議員秘書が教える』で、首尾一貫感覚は
ユダヤ人強制収容所を生き延び、その後も心身を健康に保つことができた
女性の研究から生まれたものだと言いました。このことを思い出してください。
強制収容所のような環境に置かれると、「先のことがどうなるか、まったく
わからない」「いつ殺されるかわからない」という思いになることでしょう。
把握可能感が低くなるのは必然という状況です。 また、こんな状況で
「なんとかなる」「なんとか生きて出られるだろう」などと楽観的に
考えられる人も、あまりいないでしょう。 それでも、このような状況下に
あっても、「このつらい経験には意味がある」「この経験を少しでも意味の
あるものにしよう」と思うことができる人たちはいました。
「この出来事には、何かの意味がある」と有意味感を高いレベルで感じる
ことができる人たちです。 有意味感の高い人は、「この経験には意味がある」と
思うからこそ、「なんとかして先の展開を考えよう」「何ができるか考えよう」と
把握可能感も高い状態を保てますし、それにともない「なんとかなると信じよう」
「なんとかしよう」と処理可能感も高められるといえます。
有意味感が高い人は、成長意欲が高く、課題に果敢に取り組むことが
できる人といえます。有意味感をもつことによって、把握可能感や
処理可能感につなげることができるのです。
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