お兄ちゃんは2歳に成ると、しっかりお話しも出来て朝の食事を済ませると
「お母さん、おんも(お外)に遊びに行って来るね?」って言って外に
遊びに行ったり~洋光台の市営住宅が当選し入居が決まると「僕んち、団地に
引っ越しするんだよ~」ってご近所のお友達に話したり~小さい時から活発な
お兄ちゃんでした。団地に越して数ヶ月で次男が生まれ「僕、お兄ちゃんに
成ったんだよ~赤ちゃん可愛いよ~~~」と団地に越しても皆さんに愛嬌を
振り撒いて、腕白だったけど~団地でも人気者でした。
和子が偶には内職を休んで前の公園で遊んで上げようと思い付き・・・
お隣りの棟のリーダーの所に「内職休みます」と言いに行く時、
一言お兄ちゃんに声掛けをして行けば、この様な大騒動には成らなかったのに・・・
表に出た時にお兄ちゃんを見掛けて居れば、一言、声を掛けて
行ったと思うけど~和子も直ぐに帰って来る積りだから・・・公園で遊ぶ
お兄ちゃんを探して迄・・・と言う感じでした。
リーダーのお宅から帰ったら公園には誰の姿も見えず、2歳年上のま~君や
越智君と六街区の大きな滑り台にでも行ったのだろうと・・・と思い
干して置いた布団を取り込んで・・・次男をおんぶしてま~君のお宅に
「家のお兄ちゃん来て無~い?」って聞いても「来て無いよ~」と・・・
越智君のお宅に聞いても、順坊に聞いても、みっくんに聞いても「知らない?」
1時間・2時間経ってもお兄ちゃんは帰って来ない???
団地の奥さんたちが手分けをして探して下さってもお兄ちゃんは帰って来ない
やがて、団地のお母さんたちから「お巡りさんに電話をしたら・・・」と言う
声も出て誰かが警察に電話をして下さったようです。最初は白い自転車に
乗ったお巡りさんが2人ばかり見えて・・・和子に職務質問を・・・
三渓園へ行って採った写真を数枚渡し、お巡りさんも加わって
探して下さったけどお兄ちゃんは帰って来ない・・・
団地は10軒で一つの階段の対面式で5階までお兄ちゃんを探しに行くのは
大変で・・・表から大声でお兄ちゃんを呼んでも返事はない?
若しかしたら駅前までママを探しに行ったのかも?と思い、自転車で駅前まで
探しに行って駅前の市営バスの営業所の前の公衆電話から夫の会社に電話をし
電話に出た事務員さんには、しっかり応対が出来て「主人をお願いします」と・・・
受話器の向こうから夫の声が聞こえて「もしもし・・・」って言われた
途端に、和子は思わず込み上げてくる悲しみが、溢れだして・・・
「お兄ちゃんが居なく成っちゃった~~~」と言うと夫はびっくりして・・・
「落ち着いて、もう一度話しなさい」と・・・和子は・・・
「お兄ちゃんが居なく成っちゃった~~~」・・・と言って泣くばかり・・・
「泣かないで、一度深呼吸をして・・・」と言われ・・・
「お兄ちゃんが居なくなった~~~」としか言えませんでした。夫は冷静な
態度で、「後1時間ほどしたら帰るから・・・」と言って電話を切りました。
駅前で夫に電話をして団地に帰って来ると以前お兄ちゃんは帰って無いし~
お巡りさんも2人が4人・6人・・・と増えて団地の周りから中央通りは
野次馬の人盛り・・・和子はその人盛りの中で、呆然と立ち、抜け殻の様で
頭の中は真っ白でした。 続き・・・