【番外・特別篇】
ラベンダーもマーガレットも実は低木。
違いを知って栽培上手になろう
草と木の違いをご存じでしょうか? 草花だと思っていた植物がじつは
木だと知って驚くことがあります。けれど、木だとわかるとなるほどー!
丈夫で育てやすい理由が納得。草と木の違いなんてどうでもよいと
思っている方も、これを知ってグリーンサム(栽培上手)を目指しませんか。
★春に咲く青い花★
美人のたとえは「草と木の違い」
春に優雅な花を咲かせるボタンとシャクヤク。「立てば芍薬(シャクヤク)、
座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」と、美人をたとえる
花として知られます。たしかにどの花も美しいけれど、それぞれの違いは
なんなのか、ご存じでしょうか?
なかでもボタンとシャクヤクは同じボタン属の仲間で、花の見た目も
似ています。ツバキとサザンカのように間違いやすい花なので、
その見分け方がよく話題になります。
簡単に見分けるポイントは葉。シャクヤクはツヤがあって葉は
切れ込みませんが、ボタンの葉はツヤがなくて切れ込んだ形です。
けれども、美人のたとえでポイントとしているのはそれぞれの姿です。
シャクヤクはすらりと伸びた茎に花を咲かせる「立ち姿」、
ボタンは硬くしっかりした横枝に咲く安定感のある「座り姿」が美しいと
いうわけです。ちなみにユリは風に揺れる花を「歩く姿」にたとえたのでしょう。
シャクヤクとボタンは同じ属の仲間でも、どうして姿が違うかといえば、
シャクヤクが草本(そうほん)でボタンが木本(もくほん)だからです。
シャクヤクが多年草(宿根草)なのに対して、ボタンは花木ということです。
🧿 草本と木本の違いはどんなところ⁉
私は長い間、草と木の違いは背丈の違いだと思っていました。
背丈の低いものが草で、高いものが木だと。ところが、背丈の低いハーブの
タイムやラベンダーが、植物の分類では低木だというのです。
では、草本と木本で何が違うかといえば、内側に形成層と呼ばれる
木質部があるかどうかです。木は木質部を肥大成長させて幹を太くして
高くなりますが、草は形成層がないのである程度までしか太く高くなりません。
ただ、タイムのように形成層をもっていても幹が細く背丈も伸びない
低木もあるので、植物学的には、それほど本質的な違いはないとされています。
育ててみると実感できる草本と木本の違い
木と草を区別する形成層によって、木は幹や枝を硬く丈夫にします。また、
形成層には維管束という水分や養分の通り道があり、
形成層が肥大するにつれ維管束もふえて、高い位置まで水や養分を
運べるわけです。木は幹や枝が丈夫で、水分や養分の補給に優れます。
植物を育てていると、水切れに強かったり、茎を折ってもセロテープで
補強すれば大丈夫だったり、すぐに脇芽が伸びたり、折れた茎を水に挿すと
すぐ根が伸びたりという丈夫なものに出合います。こういう植物を調べると、
草ではなくて木であることが多いものです。
例えば、飾っていたバラの切り花から根が出て、それを土に植えたら
開花して驚いたなどという話は、バラが低木だからでしょう。
マーガレットを花後に深く切り戻しても、すぐに脇芽が伸びて花数が
ふえるのも低木だからです。
木は性質が草花より強いので、育てるときに安心感があります。
草と木の違いなんてどうでもよいと思っていても、こうした違いが
頭の隅にあると、植物選びやちょっとした栽培のコツに結びつくのでは
ないでしょうか。
🧿 「クサ」と名乗る不敵な木本が多数
ここまで紹介したラベンダーやバラ、マーガレットのほかに、いかにも
草花みたいな木本はまだいろいろあります。白い苞が小花のようで
美しいユーフォルビア‘ダイアモンド・フロスト’や、暑さに強いけど
寒さが苦手で一年草扱いのペンタスなど。どちらも切り戻しに耐えてよく咲きます。
なかには日陰のグラウンドカバーに重宝するフッキソウや
ハツコイソウ(レシュノルティア)のように、「草(ソウ)」と
名乗る木本まであって、混乱しますね。
まあ、タケやヤシのように大きくなる植物でも、形成層がないので草本に
分類されるものもあって、園芸愛好家にとって分類はつねに頭を
悩ますもののようです。
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