【特別篇】
苔むす「神秘のパワースポット」ハイキング
■山の中に現れる黄色い世界
今の時期しか見られない絶景とは、3月中旬から4月中旬にかけて咲く
ミツマタ。ミツマタは黄色い花をつける和紙の原料になる木である。
枝の先が3つに分かれているのでミツマタという。
愛宕山では山の斜面にミツマタが群生しており、花期になると黄色に
染まる非日常的な絶景を求め、多くの登山客が愛宕山にやってくる。
■愛宕山と龍蔵寺
愛宕山は山中に武士から信仰が厚かった
「勝軍地蔵尊(しょうぐんじぞうそん)」を祀る山。そして、
愛宕山中腹にある飛鳥時代創建の龍蔵寺(りゅうぞうじ)は僧兵がいた寺だ。
室町時代には三好長慶(みよしながよし)に攻め落とされている。
愛宕山中で多く見かける石垣は、当時の要塞跡なのかもしれない。
愛宕山の主な登山ルートは「東ルート」「中央ルート」「南ルート」の3本で
ある。今回は龍蔵寺から出発し、「中央ルート」を使って愛宕山に登り
「東ルート」で降りるコースを選択した。
■愛宕山「中央ルート」
「中央ルート」の魅力は、古い愛宕堂(あたごどう)参道の石段と愛宕堂である。
古い石垣と石段がとても美しい。愛宕堂下の鳥居と石段は立入禁止のため、
苔むしているさまがきれいに保存されている。一年を通してこの情緒ある
風景を撮影するため、多くの人が訪れているようだ。
写真映えのするスポットである。
「中央ルート」の後半は、急な傾斜が続く。この急登はロープが
設置されているものの、落ち葉も多く壁のような坂なので、滑落に注意が必要だ。
したがってそんな急坂の下りはかなり危険。「中央ルート」は、
登り専用と思っておいたほうがよい。
急登を登りきると、「東ルート」と山頂へのルートとの分岐に至る。
分岐から山頂までは5分程度。山頂からの眺望はないが、
山頂手前からは篠山盆地を眺める景色が広がっている。
■愛宕山「東ルート」
「中央ルート」と山頂ルートの分岐から「東ルート」の下りは、しばらく
急な下り坂が続く。しかし「中央ルート」ほど急ではなく、転倒の不安は
感じない。 さらに下っていくと龍蔵寺(りゅうぞうじ)方面と
母子(もうし)方面の分岐に差し掛かるので、龍蔵寺方面へ進む。
分岐からほどなくして、ミツマタの群生地が現れる。
山の斜面にびっしりミツマタが生えており、登山道は花のトンネルに
なっていた。まだ咲き始めたばかりでつぼみが多かったが、
4月に入る頃には見頃になるだろう。
なお、このミツマタの群生地から龍蔵寺までは林道となり、より歩きやすくなる。
ただし、林道はいくつか分岐があり道標もないため、登山アプリなどを
準備しておくと安心だ。いずれにせよ「東ルート」は歩きやすく、
ミツマタの群生地を通るため、花を目当てに訪れる登山客にはおすすめである。
■愛宕山「南ルート」
龍蔵寺の奥にある鐘楼の横に、「中央ルート」入口と篠山市林道大平山線の
起点がある。大平山とは龍蔵寺の山号で、この篠山市林道大平山線起点が
「南ルート」入口。今回「南ルート」は使わなかったが、少しだけ歩いてみた。
「南ルート」のミツマタの群生地は「東ルート」より多く、規模も大きかった。
ミツマタだけを目的とするなら「南ルート」がおすすめである。ただし、
林道の分岐がいくつもあるため、道迷いには注意が必要だ。
なお「南ルート」は距離が長く、険しい。武庫川(むこがわ)の源流に
沿って歩くため、大変滑りやすい場所があったりする。武庫川は、
武田尾(たけだお)温泉がある武庫川渓谷を経て、宝塚歌劇団の前を通り、
大阪湾に至る河川。その源流を見に行くロマンはあるが、
中級者以上向けのコースである。登山に慣れないうちは
-避けたほうがよいだろう。
■今しか見られない絶景を見に行こう
ミツマタの花期は3月中旬から4月中旬。山腹を黄色く染める
これから満開を迎える。
また愛宕山を訪れるなら、あわせて写真映えする愛宕堂の石段と鳥居も
おすすめだ。日常から離れた神秘的な雰囲気を満喫しよう。
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