【特別篇】
アネモネとすてきな仲間たち。植えっぱなしで楽しもう!
秋植えの球根や、芽出し球根*のポット苗で年末から出回るアネモネ。
まだ寒さ厳しい時期から、鮮やかな花色で次々に咲くことから人気があります。
一方、野山に春の訪れを告げるアネモネの古い仲間たちの魅力にも
触れてみませんか。 芽出し球根:生産者が球根を植えつけて芽を出させたもの。
開花まで安心
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植物には植物分類による学名と、その国々での呼び名である和名や
英名などがあります。 アネモネという学名は、ロシアの植物学者
マキシモヴィッチが名づけました。NHK連続テレビ小説「らんまん」を
ご覧になっていた方にはお馴染みの名前ですね。
「日本の植物学の父」といわれる牧野富太郎が、初期に集めた植物標本に
学名をつけたのがマキシモヴィッチです。
アネモネの和名はイチリンソウで、当時は形態の似ている多くの原種が
アネモネ(イチリンソウ)属に分類されました。例えば、秋に咲く
キクザキイチゲなどです。 そのなかで、地中海地方原産の原種が交雑して
誕生したボタンイチゲ(学名:アネモネ・コロナリア)から、華やかで
多彩な園芸品種が誕生。そのため園芸でアネモネといえば、ボタンイチゲの
園芸種を指すようになっています。
🌺 野山に咲くボタンイチゲ
ボタンイチゲ(A.コロナリア)の華やかな世界
ボタンイチゲ(A.コロナリア)の園芸品種には、丸みのある花弁で
カラフルな一重咲きの‘デ・カン’や八重咲きの‘セント・ブリジッド’、
コンパクトな株で大輪の‘ポルト’などが定番です。
🌺 アネモネ・コロナリア‘デ・カン’
ポルトの中でも、花芯に入る濃い紫色が放射状のグラデーションを描く
‘ポルトパール’は、エレガントな花形と色があいまって人気を集めています。
近年はセミダブルの品種も登場。大人っぽい魅力があります。
これらは早ければ11月から5月の大型連休ころまで咲き続けます。
秋に植えるアネモネの球根は干からびてごく小さなものですが、花がらを
摘むと次々に花が咲き長く楽しめます。花後に花芯の黒い球体が残り、やがて
ほぐれてタネを飛ばす姿もユニークです。
地中海地方の原産なので、高温多湿を嫌います。水はけのよい場所や
鉢植えで育て、うまく夏越しできると秋にまた芽を出して開花する
「植えっぱなし球根」です。肥料などはとくに必要ありません。
🌺 日本の野山を飾るスプリング・エフェメラル
かつて世界に100の原種があるといわれたアネモネの仲間。その属名と
なったイチリンソウは本州から九州や四国に分布する日本原産種です。
深く切れ込んだ小葉を3枚ずつつけた葉のつけ根から、純白の花を立ち上げます。
🌺 イチリンソウ
これによく似た花を2輪以上立ち上げるのがニリンソウで、こちらは
北海道にも分布。どちらも草丈が低く、林の縁や明るい林床にカーペットの
ように咲き広がると、幻想的な美しさです。タネを結ぶと茎葉は枯れて
しまうので、春にだけ現われる「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と
呼ばれます。
🌺 ニリンソウ
ユキワリイチゲなど、美しいスプリング・エフェメラルがあります。
これらは山野草の売り場に苗が並びますが、水はけのよい用土で育てる
ちょっと上級者向けの花。高山植物園などで眺めるのも楽しみ方のひとつです。
🌺 アズマイチゲ
🌺 キクザキイチゲ
🌺 ユキワリイチゲ
山野草の雰囲気を自宅でも楽しむならバルカン半島東部~トルコなど、
地中海東部沿岸地域が原産地のアネモネ・ブランダは、日本のキクザキイチゲに
似た草姿、雰囲気の花です。暑さには弱いものの日当たりよい場所を
好むので、落葉樹の下などが適します。
ブランダはイギリスの古典植物として親しまれ、赤やピンク、青や紫色、
白など、多彩な花色の園芸品種があります。山野草的な雰囲気をもつ
アネモネのなかでも育てやすいといえます。
🌺 ブランダ
最初に書いたように、かつてアネモネ属は秋に咲くシュウメイギクや、
ニリンソウやキクザキイチゲなどをふくむ大きな属でした。けれども
近年のDNA分析による分類で以下のように属が分かれました。
アネモネ属:ボタンイチゲ(アネモネ・コロナリア)やA.パボニナなど
バイカイチゲなど
見た目はよく似ているイチリンソウとニリンソウも別々の属に分類されて
いるので、不思議な感じです。しかも、アネモネ属にはまだ63種が
あるとか……。
イギリスのキュー王立植物園が分類を見直したのは2018年ですが、
園芸店や図鑑などの多くもまだ旧名で扱っているので、どちらの属名で
呼んでも間違いではありません。アネモネの古い仲間をふくめて魅力的な
花々に触れてみてください。
🌺 アネモノイデス属になったシルベストリス
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