美しい花を長く咲かせるコツは?
童謡にも歌われるチューリップは、サクラに並んで春を代表する花です。
愛らしくシンプルなイメージをお持ちかもしれませんが、じつは幅広い
花色と多彩な花形を誇ります。今回はそんなチューリップを深掘り!
誰もが好きにならずにいられない花の魅力です。
🧿 チューリップを長く楽しむために
チューリップは秋の園芸店で店先を賑わす秋植え球根植物です。
一般的な園芸品種の球根はピンポン玉を半分にしたサイズの半球形。
原種系の球根はやや小さくて涙型をしています。 球根は秋に
植えつけることで、本格的な寒さが訪れる前に地中で根を伸ばし、
来春に咲く準備を整えます。そして、一定の寒さによって開花のスイッチが
入るため、沖縄などの亜熱帯気候では咲きにくい花でした。今は暖かい
沖縄でも咲く品種が登場しています。 ですから、チューリップの鉢植えを
室内や温室に入れるのは厳禁です。開花した鉢植えを室内で楽しむのはまだ
よくても、暖かい場所では早く咲き終わってしまいます。
こうしたチューリップの特性を利用して、一足早く鉢植えを冷蔵して
寒さにあわせ、年末あたりから咲かせる手法もあります。寒さのなかで
咲き出したチューリップは半月ほども咲き続けます。
それに対して春に咲くチューリップは1週間ほどで散ってしまいます。
もっと長く楽しみたい方におすすめなのが、開花期をずらした花選びです。
チューリップにはいくつもの系統があり、系統によって3月下旬から
5月上旬まで開花期が異なります。
早咲きの系統と遅れて咲き出す系統を一緒に植えつければ、次々と咲く
チューリップが長く楽しめます。
開花期別にチューリップの多彩な系統を紹介します。
🧿 開花期別に覚えたいチューリップの系統
🌷🌷3月下旬~4月上旬に開花する早生 一重早咲き
チューリップの系統を表す略号でSE(シングル・アーリー)とされる
園芸品種で、シンプルな一重の早咲きです。ピンクの‘クリスマスドリーム’や
黄色の‘サニープリンス’、オレンジ色がかる‘アプリコット
ビューティー’などがあります。
🌷🌷八重早咲き
DE(ダブル・アーリー)という品種群。幾重にもなる花弁がゴージャスで、
一重より長く花が残ります。白に緑の斑が入る‘ホワイトヴァレー’や、
八重咲きのなかでもっとも青色に近い‘ライラックブルー’などがあります。
🧿 4月中旬~下旬に開花する中生
🌷🌷トライアンフ
系統の略号でT(トライアンフ)と表示されますが、品種数が多すぎて特徴が
つかみにくいといわれます。花弁の縁に別の色が入る覆輪の品種も多く、
人気の‘ガボタ’や‘ストロングゴールド’などがあります。
遅咲きの一重に原種のフォステリアナをかけあわせた
系統DH(ダーウィンハイブリッド)は、草丈60~70㎝と大型で丈夫です。
‘オックスフォード’や‘サーモンインプレッション’などがあります。
🧿 4月下旬~5月上旬に開花する晩生
🌷🌷一重晩咲きと八重晩咲き
一重晩咲きSL(シングル・レイト)は草丈が高く、
切り花でもよく利用されます。
‘クイーンオブナイト’や‘ビッグスマイル’があります。
八重晩咲きDL(ダブル・レイト)はSLの突然変異でボタン咲きとも
呼ばれ、草丈30~40㎝と遅咲きのなかではコンパクトです。
‘アンジェリケ’や‘ブルーダイアモンド’が知られます。
🌷🌷ユリ咲き
略号はリリーの(L)。ユリに似て花弁の先端が長くとがり、外側に反転する
スマートな花形です。‘バレリーナ’や‘ジャクリーン’などがあります。
🌷🌷フリンジ咲き
(F)はフリルやレースのように花弁の縁に細かな切れ込みが入ります。
バイカラーや八重咲きなどの品種もあります。
‘パルバドス’や‘ゴリラ’などが知られます。
🌷🌷レンブラント系
オランダを代表する画家の名を冠した(R)は、白や黄色の花弁に
モザイク状の絞りが入ります。この模様はモザイク病に特有ですが、
現在出回っている品種は安全なものです。‘レムズフェイバリット’など。
🌷🌷パーロット咲き
パーロット(P)とはオウムのことで、花弁縁に入る切れ込みやねじれが
オウムの羽を思わせます。花色も微妙な凝ったものが目立ち、
‘フレミングパーロット’や‘シルバーパーロット’があります。
🌷🌷ビリディフローラ系
略号(V)は花弁に緑色の筋が入る美しい花色。花形もほっそりして
スマートで、ユリ咲きやパーロット咲きに重なることもあります。
‘スプリンググリーン’や‘ナイトライダー’が知られます。
チューリップはやはり4月下旬~5月上旬に開花する晩生の品種が
多いのですが、中生や早生の品種と取り混ぜれば長く楽しめます。
🧿もっと楽しみたいチューリップのバリエーション
チューリップは子どもっぽい花と思われる方もいらっしゃるかも
しれませんが、ここに出て来たレンブラント咲きやユリ咲き、
パーロット咲きなどはエレガントな雰囲気があります。花色を選べば
大人っぽい華やかさが楽しめるのではないでしょうか。
花色も赤・白・黄色だけではなく、黒に近いシックな花色や複雑な
バイカラーも豊富です。それから、球根1球から1花しか咲かなかった
チューリップにも、茎が分かれて複数の花が咲く枝咲き(スプレー咲き)が
登場しています。園芸店の店先やネットショップの売り場で
探してみてください。
また、私が特におすすめしたいのは原種系のチューリップです。華やかな
園芸品種の親になった原種は愛らしいもので、原種のよさを生かした
「原種系」と呼ばれる園芸品種も登場しています。球根の大きい園芸品種は
1年しか咲かないことが多いのですが、原種系は植えっぱなしで
何年も咲いて楽しめます。
🧿 さあ、チューリップを植えてみよう!
チューリップの球根は球根2球分の深さに植えつけます。
球根の平らな面とカーブの面を一方向に揃えて植えると、葉の出方が
そろって美しいものです。できれば1か所(1鉢)に3球以上まとめて
植えると見栄えがします。
チューリップだけを植えると春まで何もない地面を眺めなくては
ならないので、冬も咲いてくれるビオラやガーデンシクラメンなどと
植えつけましょう。そうすれば水やりも忘れません。特にチューリップは
芽出しの時期に水切れさせてしまうと、花が咲かないことがあるので
要注意です。 年末あるいは年始に植えつけても春に花は咲きますが、
できるだけ寒さの前に植えた方が丈夫に育ち、翌年また咲く可能性が
高くなります。同じような時期に咲く球根植物のムスカリや
スイセンなどとも混植して、春に賑やかなシーンを楽しんでください。
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