「ふとノートを開くと…」義妹びいきの義家族に

《和子は又々こんな記事を見た~》

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 義妹びいきの義家族に辟易する40代専業主婦が

     掴んだ義母の“驚くべき秘密”

 

専業主婦の私は、夫と大学生の息子と義両親が建てた二世帯住宅に

暮らしています。義理の父は以前会社を経営していて、具体額は

知りませんが、それなりの資産があるようです。ただ、義父は

2年ほど前から体調を崩して入退院を繰り返し、今は医療設備の整った

高齢者施設に入居しています。

 

義妹一家へ抱く複雑な思い

夫には3歳下の妹がいます。開業医と結婚し、わが家から車で30分ほどの

マンションに住んでいます。義妹夫婦には息子と同い年の怜花ちゃんという

娘がいるのですが、子供の頃からずばぬけて優秀で、今は義弟の跡継ぎを

目指し名門大学の医学部に通っています。

息子も今春有名私大の経済学部に入学しましたが、昔から何かというと

怜花ちゃんと比較され、それがトラウマになっているようです。特に義母は

怜花ちゃんを溺愛し、知人や親戚にも「怜花は自慢の孫娘」と

アピールしてきました。以前、わが家を訪れた義母の友人が

外出しようとしていた息子を見かけ、「あら、男の子のお孫さんもいたのね」

と驚いたくらいです。 義妹も私と同じ専業主婦ですが、義母は義父の世話や

雑用など一切合切を私にばかり押し付けてきます。近くにいるので

頼みやすいということもあるのでしょうが、恐らくは、実家が小さな酒店で

地方の短大卒の私を見下しているのだと思います。あるいは、息子が

怜花ちゃんほど優秀でないのは、私の遺伝子や教育方法に問題があると

考えているのかもしれません。

 

片付け中に知った義母の驚くべき秘密

そんな義母の驚くべき秘密を知ってしまったのは数カ月前のことでした。

外出中の義母から電話があり、「1時間ほど後に友達を連れて帰るから、

うちのリビングを片付けておいてくれない?」と頼まれたのです。

預かっていた鍵で義両親の家に入ると、リビングに隣接した義母の

居室(和室)の襖(ふすま)が開いていました。外出する際に慌てて

締め忘れたのでしょう。 ふと目に留まったのが、義母が手紙や書を

したためる文台の上に置かれた和紙のノートでした。手に取って中を開くと、

そこにはなんと、義母が義妹に渡したと思われるお金の細目と金額、

渡した日付が書いてありました。 怜花ちゃんの学費や塾の費用に加え、

義弟の医院の医療機器の購入も援助していたらしく、金額はこの10年ほどで

数千万円に上っていました。それを見て、思わず脱力したというか、

体中の力が抜けていくのを感じました。 義母は息子にもお年玉や

入学祝いを欠かしたことがありませんが、あくまで常識的な金額の範囲内です。

義妹や怜花ちゃんをかわいがっているのは分かっていましたが、

まさかこんなことまでしていたとは思いませんでした。

義両親は不動産も含めた財産を夫と義妹が半分ずつ分けるように遺言書を

用意しているようです。遺言書通りの相続が行われるとすれば、トータルで

義妹の取り分が多くなるのは自明の理です。義母にいいように

こき使われている自分が情けなくなりました。

 

もやもやした気持ちを抱え市民講座に参加

「嫁の相続」と題した市民講座に興味を持ったのは、この出来事が

きっかけでした。事情が事情ですから、かなりネガティブな感情を抱えて

参加したのですが、講座自体はとても興味深いものでした。

主催したのは、税理士事務所で働きながら相続診断士の資格を取得した

内海さんという50代の女性です。講座の前半はさながら、この内海さんの

独演会でした。 義父の介護をほぼ1人で担った内海さんは、義父からの

生前贈与や遺贈の提案を断り、特別寄与料制度

(相続人でない親族が被相続人の財産の維持や増加に貢献したら、

相続人に対してその貢献度に応じた寄与料を請求できる制度)を活用して

夫のきょうだいに寄与料の支払いを認めさせたのだそうです。

「義父からの提案を受け入れる方が賢明だったかもしれないし、

私の代わりに相続人である夫が多めに遺産を受け取った方が相続税

2割加算がない分お得だったかもしれない。でも、せっかく制度が

できたのだから使ってみることに意義があったと思っています」

克明な介護日記をつけ、領収書も1枚残らず保存するなど、内海さんの

徹底したやり方は痛快でもあり、参加者からも拍手喝采でした。

講座の後半は参加者によるリアルな相続相談でこちらも大いに

盛り上がりました。 講座を終え、今のもやもやした気持ちを内海さんに

相談してみたいと考えるようになりました。そこで思い立ったら吉日

とばかり、翌日には内海さんの事務所に連絡を入れ、面談を受けることに

したのです。

義母が義妹一家に数千万円贈与していた事実が発覚

義妹は開業医に嫁いでいます。私と同じ専業主婦で、車で30分ほどの

距離に住んでいるのに、高齢者施設に入居している義父の着替えの用意や

買い物といった義両親の世話はほとんど私任せです。私には怜花ちゃんと

同学年の長男がいますが、義両親からはごくごく一般的な額の入学祝いや

お年玉しかいただいたことがありません。

義両親からの相続は、不動産を含めた財産を夫と義妹で平等に分割すると

いう遺言書が用意してあると聞いています。それでは不平等ではないかと

疑問を持ちました。

 

専門家への相談を決める

自治体の広報誌で目に留まった「嫁の相続」という市民講座に参加することに

したのは、そんな経緯があったからです。そこでは主催者である相続診断士の

内海さんが、ご自身が特別寄与制度を活用して義父の介護の特別寄与料を

相続人の夫のきょうだいに払わせた体験談を赤裸々に語って拍手喝采

浴びていました。 内海さんなら、同じ嫁の立場で今の私のもやもやした

気持ちを理解してくれるのではないか。そう思って内海さんに面談を

お願いすることにしました。

内海さんは、お話し上手であると同時に聞き上手でもありました。

柔らかな笑みを浮かべた内海さんを前にすると、胸の中に貯まった

鬱屈(うっくつ)した思いが、言葉となってどんどん口から

溢(あふ)れてきました。 中でも義母の部屋で義妹への支援をメモした

ノートを見つけた体験は、話しながらもまたあの時の悔しさが

込み上げてきて涙がこぼれ落ちました。

「義母は私たちに黙って、義妹一家に少なからぬ支援をしていたんです。

こういうことをしておきながら『相続は兄妹平等にするよう

遺言書を書いた』っておかしくないですか」

私の感情が治まるのを待ってから、内海さんは私をじっと見てこう言いました。

窪川さん、今のお話には『不平等な相続』ということ以外にも大変

デリケートな問題が含まれています。例えば、教育費や生活費の援助は

別として、1人につき年間110万を超える贈与には贈与税がかかります。

一方で、妹さんに渡していたのが“少なからぬ金額”だとしたら、

そのお金はどこから出てきたお金かという問題もありますよね」

「私は国税でも税理士でもありませんから、そこについて追及したりは

しませんけれど、窪川さんは今考えていることについて、まず、

ご主人と話し合ってみるのがいいかと思います」

核心を突いた言葉にどきりとしました。ああ、この人は面白おかしく

相続の話をするだけの人ではないのだなと思いました。

内海さんはその後、こんなアドバイスもくれました。

「一般論ですが、あなたの息子さんと従姉妹さんとの格差が大きい

ように思うので、ご主人から義理のご両親に相談して、教育資金贈与の

特例(最大1500万円まで非課税)や相続時精算課税制度の非課税枠

(年間110万円)を使った生前贈与を受けておいてもいいかもしれませんね」

 

夫と話し合って分かった「意外な事実」

自宅で夫に内海さんの提案を持ち出すと、夫は気まずそうな顔をして

次のような話を聞かせてくれました。

実は義弟の病院経営はうまくいっておらず、義妹が度々義両親に

泣きついていたこと。怜花ちゃんの進学の際にも、義両親や夫を交えた

親族会議をして義両親が学費を払うと決めたこと。親族会議の結果は

夫も容認していたようです。 「俺も8年かかって大学を卒業したし、

学生時代は海外を放浪したりして親には世話になりっ放しだった。

この家や土地だって元はと言えば親のものだしね。他の相続人より多めに

お金をもらったりしていることを『特別受益』と言うらしいけど、

そういう意味では、妹の特別受益を主張できる立場じゃないんだよ」

同時に、今私が義両親の面倒を見ていることを「俺としても本当に

ありがたいと思ってるし、母親もああいう性格だから面と向かって

お前には言わないだろうけれど『涼子さんは本当によくやってくれている。

自分の娘よりよっぽど頼りになる』といつも言っている」と

言ってくれたことで、私自身、救われたような気持ちになりました。

夫は息子の学費についてもこんな打ち明け話をしてくれました。

「父親は『怜花ばかり援助するわけにはいかないだろ』と出そうとしたけど、

俺が『止めてくれ』って言ったんだ。俺が自分で払えるからって。でも、

それが怜花に対する劣等感みたいなものの原因になっているとしたら、

その内海さんとやらが言うように生前贈与をしてもらってもいいのかも

しれないな」

 

話し合いで初めて知った義家族の複雑な事情

夫の話は私にとって青天霹靂でした。今思えば、私が夫の家族の事情を

何も知らなかっただけで、全て私の独りよがりだったのです。内海さんは

私に自分でそれを確認させたかったのだなと、遅ればせながらようやく

気付いた次第です。

内海さんに「夫と話し合いをしたら一発で解決しました。息子への生前贈与も

検討してもらうそうです」とお礼のメールを送ったら、サムズアップの

絵文字が返信されました。

しかし、内海さんとのご縁はそれだけでは終わりませんでした。夫は

義父から頼まれて相続全般を任せられる税理士事務所を探していたらしく、

「涼子の話を聞いて、内海さんという人はなかなか機転の利く、

洞察力のある人だなという印象を持ったんだ」と、まずは内海さんに

相続診断をしてもらい、その後の相続対策や相続の実務については

内海さんが勤務していた税理士事務所に依頼することを考えているようでした。

以前の顧問税理士が高齢になって事務所を閉めた後、義両親の資産管理も

しっかりなされていなかったことから、そのあたりも含めてのご相談です。

改めて内海さんに連絡を取ると、今度はこんなメールが返ってきました。

窪川さんのお役に立てるなら私もうれしいです。相続では、お嫁さんや

お孫さんなど相続人以外の人も含めてファミリーでしっかり情報を共有し、

皆が納得して進めていくことが重要だと思っています。微力ながら、

そういう相続ができるようにお手伝いさせていただきます」

最後にはやっぱり、サムズアップの絵文字がついていました。これには

私もサムズアップで返信しました。

「内海さん、どうかこれからもよろしくお願いしますね」と

いう思いを込めて。

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【なってみりゃ あの年寄りは 偉かった(シルバー川柳)】