2億円の財産を残して死んだ父…―2

       

     《和子は又々こんな記事を見た~》

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父親の逆鱗に触れて「2億円の遺産相続」から“

排除”された息子たち…彼らが起こした「驚きの訴え」

次男でありながら父親と同居し、妻と2人で面倒を見てきた広瀬孝則さん

(60代男性・仮名)。三人兄弟であるものの長男と三男は都会で就職して

独立しており、ほとんど実家には寄り付かなかったといいます。

父親は長男や三男よりも同居している孝則さんの妻を信頼しており、

「次男夫婦に財産を等分に相続させ、長男、三男には遺留分相当の現金を

相続させる」という公正証書遺言を残していました。それに反発した

長男と三男が「遺言は無効である」との訴えを起こしてきたのです。

「父親が認知症だった」という主張

長男と三男の主張は、「遺言書を作った当時、父親は認知症を発症して

いたため、意思能力が低下していた。よって遺言書が作れる状態では

なかったため、無効である」という内容でした。

孝則さんと妻によると、父親は加齢により今までと同じようには

動けなくなり、要介護3の認定をされて、妻やヘルパーの介護を必要と

していたものの、ずっと自宅で不自由なく生活をしていて、受け答えも

はっきりしていたといいます。

よって公正証書遺言を作成したときも本人の意思は明確で、

何の問題もなく作成できたということでした。しかも、公正証書遺言は、

公証人が本人の意思確認をし、本人が署名捺印して作成するので、

偽造の疑いはなく、法的にも問題なく、有効な遺言として成立する

ものなのです。 仮に公正証書遺言が無効だとされる場合は、

「本人が認知症で、意思能力がなかった」という証拠を元に、裁判所が

判断することになります。

要介護認定=認知症、ではない

認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、

日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。

初期は、加齢による単なる物忘れなどに見えることが多いのですが、

仕事や家事など普段やってきたことでミスが増える、お金の勘定が

できなくなる、通い慣れた道で迷う、話が通じなくなる、

憂うつ・不安になる、気力がなくなる、現実には見えないものが見える、

妄想があるなどの症状が現れ、意思確認ができなくなるようになります。

一方で、要介護とは生活するために介護が必要になるレベルの認定であり、

認知症の進行度合と必ずしも一致するわけではありません。

下記に要介護の要件を上げてみましょう。

   

[要介護1] 立ち上がりや歩行に不安定さがみられたり、排泄や入浴などに

部分的な介助が必要になったりなど、見守りや手助けなどの社会的支援が

必要な状態。「道に迷うことがある」「薬を飲み忘れる」など認知機能の

低下による日常生活への影響がみられる場合があります。

[要介護2] 軽度の介護が必要な状態。立ち上がりや歩行などが自力では

難しいケースが多く、日常生活に一部または全面的な介助が必要だが、

「浴槽への移動時の介助や背中を洗ってもらうなどの手助けがあれば

入浴できる」「衣類は自分で着られる」など、自分でできることも

たくさんあります。

[要介護3] 中等度の介護が必要な状態。立ち上がりや歩行などが

自力ではできないケースが多く、起床から就寝まで日常生活に全面的な

介助が必要。状態や環境によっては在宅での生活が難しいため、

特別養護老人ホームへの入居が可能となります。

[要介護4] 重度の介護が必要な状態です。立ち上がりや立位の保持が、

自力では難しいケースが多くみられます。日常生活の上で能力の低下が

見られ、排泄や入浴、衣服の着脱など多くの場面で介助が必要です。

[要介護5] 最重度の介護が必要な状態です。日常生活の全般に介助が

必要となり、意思の伝達が困難なケースも多くあります。 特に、食事に

関しては全介助となるケースが増えてきます。

証拠を残していた!

話を広瀬家の相続に戻しましょう。遺言書は父親が顧問弁護士と

顧問税理士を証人として、最寄りの公証役場に出向いて作成したものですが、

孝則さんと妻は父親を車に乗せて公証役場まで連れていくために

同行したといいます。そして公証人、証人の許可を得て、作成風景を動画で

残していました。随所で写真も撮って残していたといいます。

   

これを証拠として裁判所に提出し、さらには作成した公証人にも証人喚問に

協力してもらい、作成時に違和感はなく、問題なく遺言書の作成はできたと

証言してもらったといいます。こうした証拠や証言を合わせることにより、

裁判では勝訴し、父親の公正証書遺言は無効とはならずに、

父親の意思通りに執行できたと孝則さんより報告がありました。

孝則さんと妻は顧問弁護士や顧問税理士のアドバイスを受けて、

遺言書だけでなく、何事も記録するようにしており、生前贈与についても

契約書だけでなく、契約時の動画や写真を残してきたといいます。

そうした日常の積み重ねによって裁判でも証拠として認められたのでしょう。

自筆証書遺言は無効になることも

多くの方は自筆で遺言書を残しておられ、それが死後に争いのもとに

なることがあります。たとえば「長男に全財産を相続させる」と記した

遺言書があったとして、それを見た次男や長女など他のきょうだいが

納得しないというのはよくあるケースです。

仮に遺言書の要件となる自筆、日付け、署名、押印がすべて整っていて、

裁判所の検認も済んでいたとしても、納得できない相続人はその遺言書を

認めず、無効にするために裁判所に訴えることとなるのです。

   

多く場合では、「これは本人の筆跡ではない!」と指摘され、筆跡鑑定を

されることもあります。また、作成当時は認知症で正当な判断が

できる状態ではなく、別の人間に指示されて書かされたという主張です。

その際は、認知症だったという証拠となる診断書などが添付されます。

こうした状況が揃うと、たとえ検認されていても、遺言書は「無効」だと

いう判断が下されるのです。よって自筆の遺言書は、無効になりうる

不安要素も含んでいるということになります。

公正証書遺言が否認されることはあるか?

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言者本人の面前で

意思確認を行ったうえで作成されますので、遺言書自体が否認されて

無効になるということは滅多にないと言えます。

そのために身分証明書や印鑑証明書での本人確認は不可欠であり、

なおかつ、対面で本人から遺言書の内容について意思確認をしますので、

認知症のために会話が成立しなければ、そもそも、そのときに遺言書が

作成できていないと言えるのです。

   

今回のご相談者の孝則さんの場合も、幸いなことに、写真や動画など

いくつかの記録が残っていたからこそ、遺言書は正当に作成されていると

スムーズに認められて無効にはならなったのです。

ようやく決着できて、気持ちが楽になったと孝則さんからの報告を聞いて、

こちらもほっとしています。

しかし、公正証書遺言さえ作れば安心ということでも

なくなってきましたので、いくつもの記録を残して、

遺言書が無効にならない証拠も残す必要があると言えます。

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【いたわりも 耳が遠くて どなりごえ(シルバー川柳)】