啓蟄のこと・・・【住まいと庭】―3

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立春のひかりに目覚め、雨水の潤いに心が少し鎮まってきたあと土の道を

歩くと、靴の裏の感覚がふんわりとやわらかくなっています。

ころぶとさぞ痛いだろうな、と思うほどコチコチに固まっていた冬の地面も

いつのまにか緩み、頑に閉じていた扉がひらきます。

小さな、いのちは目を覚まし、草木花の彩りも豊かに。

静けさの中に僅かに残っていた冬のなごりともそろそろ別れの時です。

旅立つ冬を想うさみしさは、そのままに。

空から大地から、よみがえって来るいのちの音に耳を澄まし、

ともに歩きはじめる季節です。

大地のひらく音

子どもの頃、コンクリートの道の下がどんな風になっているのか、

いつも考えていました。分厚いかたまりを剥がしてみることができたら、と

夢想し、押しつぶされた地面のことや、植物や小さな虫たちがどうなって

いるのか、気になって仕方がないのです。それは今のようにほとんどの道路が

舗装された時代とは異なり、雨にゆるみ、水たまりのできた道を長靴で

愉しむ時間にも恵まれていたから。

土の息吹を感じる場所とそうでない場所の違いを感じていたのだと思います。

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コンクリートで覆われた道があたりまえになり、はからずも土から遠く

離れて暮らすことになった私達は、大地が開き、そこからたちのぼってくる

得体の知れない力の気配に、残念ながらなかなか気づくことができません。

それでも赤信号を待つ間、会社に向かう道すがらに、ほんの少しだけでも、

足元に気持を向けて歩くことができるなら、街路樹の下からわずかにのぞく

土からも、立ち上る気配を感じ、今までとは違う芽吹きを

見つけることができます。

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例年以上に寒かった今年は、春の幕開けも思いがけないほど、かなり

ゆっくりです。でもそのおかげで、いつもなら足早に過ぎていく季節に

置いていかれるような気がして焦ってしまうところも、慌てることなく

自分のペースで季節との折り合いをつけられそうです。

日陰ではふきのとうがひらき、沈丁花の香りは、まだ寝ぼけ眼の背筋を

きりっと仕立ててくれます。仏教と関係の深いシキミの花のかたちも見事。

地面を染めているのはオオイヌノフグリ。伝統色で見るなら

「天色 (あまいろ) 」でしょうか。

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植物や小さないのちは、季節のちからを受けとり、内側に眠っていた力を

呼び覚まします。季節の流れがまだ助走の今なら、ゆっくりの人も

せっかちの人もリズムをあわせやすい時です。これからはじまる春爛漫の

流れに乗り、自分らしい調和へとつなげるために。大地からたちのぼる啓蟄

季節の力を探し、みつけて歩きたい季節です。

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昼と夜がだんだんと足を揃えて、同じ長さに近づいていきます。大地と空、

両方からふり注ぐ力をうけとり、さまざまなもののバランスに気持が

向かう季節。いよいよ春分の到来です。

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