日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を
暮らしに取り入れてきましたが、この「二十四節気の花あしらい」
では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを
第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして、最後の一輪まで楽しみ
つくす、そんな花のあしらいのお話です。
都会で暮らしているとめったにお目にかかれない霜。
暦の上では冷たい空気の中の露が霜に代わる季節になりました。
今年は衣替えのタイミングも見失うほど暑かったり寒かったりしましたが、
ようやく寒さを感じるようになりましたね。
そんな冷え込んだ庭に咲く秋バラは、春に咲くバラより繊細で
小ぶりなものが多く、濃厚な香りも特徴。今日は庭に咲くようバラのよう
そんな自由な枝ぶりに繊細な美しさをあわせた白いバラ
『グリーンアイス』を選んでみました。
霜が降りた実家の庭で寒さに耐えながら、ほんのりと赤味を帯びた色で
美しく咲いていたバラがこの『グリーンアイス』。
私の思い出のバラのひとつです。
広がりを出すようにふんわりいける
今回使用した『グリーンアイス』は一本でも美しく枝分かれしている
スプレー咲きとよばれるバラなので、スタイリングも楽ちんです。
数本まとめていけるだけで、まるでブーケのような美しさ。
ポイントは広がりを作ること。
お花をいけ慣れていないと、花瓶の中で立たせようと頑張りがちですが、
ふんわり広がりをだすように横向きの顔も意識すれば、どこから見ても
素敵な花あしらいができあがります。 美しい花姿を楽しむには、
バラだけで楽しむこともおすすめです。 何枚にも重なる小さな花びら、
花を引き立てる緑の葉や動きのある蕾など、世界中でバラの愛好家が
多いことも納得の美しさです。
器をかえて気分もチェンジ
器を変えるだけで花の印象も変わります。透明感のあるガラスから
あたたかみのある、焼きものの器へいけ替えてみました。
お手入れの時に器も取り替えてみると気分も変わりおすすめです。
枝ものを足して華やかに
バラだけでも十分素敵ですが、もっと季節感をプラスしたい、
華やかにしたい時は秋を感じる実ものや、秋色に色付いたあじさいを。
赤く色づいた『野イバラの実』と、風車のような『クレマチスシード』
くすんだブルーの『秋色アジサイ』そして霜の降りたイメージにぴったりな
『ロシアンオリーブ』を合わせてみました。 最初にアジサイをいけて
ベースすると形が作りやすいですよ。アジサイにからめるようにバラを
好きな形にいけて、ロシアンオリーブを添えます。ポイントになる場所に
野イバラの実とクレマチスシードを入れて秋の雰囲気に。
ここでも花を立たせるのではなく〈ふんわり広がるように〉を意識しましょう。
小さな花瓶を並べてスタイリッシュに
バラって繊細でお手入れが面倒そう…
そういったお客様の声をたくさん聞きます。
確かに目立つ花なので、首が垂れてしんなりしてしまうイメージが
強いかもしれません。本当はそんなことはないのですが
(他の花と同じでお手入れをすれば長持ちします!)
今回使っているスプレータイプのバラは元気がなくなったとしても
花がいくつも付いているため、痛みが目立ちにくいのでおすすめです。
お手入れをして、短くなってきたら、小さめの花瓶にいけて
イメージチェンジ。花を同じ高さにしてしまうと単調になってしまうので、
高低差をつけてリズムをつけます。今回は左に流すデザインにして
スタイリッシュなオブジェのようにしました。
お皿にならべて最後の一輪も楽しむ
楽しみつくしていよいよ花に元気がなくなってきても、まだ楽しめます!
捨ててしまってはもったいない。
バラを花首から切って、お皿にうすく張った水に浮かべてみてください。
元気を取り戻してうれしくなりますよ! 拾った落ち葉を添えれば、
秋の花あしらいのできあがり。 面で見せるアレンジはローテーブルなど、
見下ろす場所にぴったり。 お皿をガラスに変えるとまた違った
印象になりますので、器の組合せを考えるのも楽しいですね。
ぜひお手持ちの食器で試してみてください。
秋の夜長はお花を楽しんで
だんだんと日が短くなって夜が長くなると、おうちで過ごす時間が
増えてきます。読書をしたり、サブスクで動画を見たり…どうしても目を
酷使してしまいがちに。そんな時、ふと目に入るところに植物を置いて
おくだけで目が安らぐのは私だけでないはず。多くの方が感じるふしぎな
植物のちから。凝り固まった目のピントを美しい花でほぐして、
秋のおうち時間をゆっくり楽しみましょう!
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