誰もが生きた分の財産を持っている
「人生100年時代」といわれるこれからを、私たちはどのように
生きていくべきか。前回はお金などの心配ばかりをするのではなく、
新しい生き方を模索できるチャンスと捉えましょう、という話をしましたが
今度は、これまで自分が築いてきた「財産」を見つけていきます。なぜなら
今後の長い人生で、あなたの強みを生かさない手はないからです。
このようにお話しすると、「私はたいしたことはしていない」
「何の資格も持っていない」と自信なさげに言う方も少なくありません。
私たちを取り巻く社会やメディアは、不安や不満を煽って、物や情報を
売ろうとする傾向があります。そのため私たちは、気付かないうちに自分の
人生についても、つい「足りない点」を探してしまいがち。ですが実際は、
50年生きたら50年分の、70年生きたら70年分の財産を持っているのです。
経験から備えたものが、大切な「財産」
以前、「料理も掃除も洗濯もそこそこはできます。でも、これだけは他の人に
負けない、すごい力がありません」と話す人がいました。ですが、
「そこそこ」は悪いことでしょうか?
例えば、最近、共働き世帯向けの家事支援サービスが増えていますが、
日常的に、超一流の料理人に食事を作りに来られても困りますよね(笑)。
それよりも、「そこそこ」に家庭を維持できる力の方が、この場面では
役に立つわけです。 つまり、家事が「そこそこ」できるという自分の
尺度では「小さい」と思うことでも、別の人の尺度や違う世代の人の
目線では、宝物のようなことに映ります。だから、ご自分のしてきたことに
大きい、小さいはないということ。このことをぜひ、心にとどめておいて
いただきたいと思います。 また、つい、「○○大学卒業」や
「○○免許取得」といった社会の尺度が、自分の経験を証明してくれるように
思いがちですが、これらは、あくまでも称号にすぎません。それよりも、
自分自身が経験から備えたものが、ここでいう大切な「財産」です。
称号=財産という発想も、一度取り払ってみましょう。
自分を客観視し、強みを見つける
これからご紹介する2つのワークでは、どちらも、自分がこれまでに
行ってきた経験や、自分を取り巻く環境を客観視します。それをヒントに、
自分は何が大事なのか、何が好きなのか、どういうときに力を
発揮できるのか、などを見つけていきます。
この棚卸し作業は、いうならば、クローゼットの片付けに似ています。
開かずの間になっていたクローゼットを開け、忘れていた服に気付き、
整理し、時には二度と着たくないと思っていた服にも向き合う。表面だけを
さらうのではなく、ゆっくり時間をかけて、奥から掘り起こして行うことが大事です。
進めていくと、「これってこういうことかしら」と、意識の下に
眠っていた何かが、ふと見つかることがあります。でも、何も見つからなくても
悲しむ必要はありません。「これから何でもできる」と、発想を変えればいいだけ。
つらい経験も、何もないという事実も、すべてこれからにつながります。
それでは早速、行っていきましょう。
ワーク1:過去の経験を洗い出す
生まれてから今の年齢までの人生経験を、「自分史」を書くことで
客観視していきます。
🔘 西暦と年齢に沿って、「幼稚園に行った」「引っ越した」などの
出来事を書き、その後、そのときに印象的だったことや、自分がどんな
気持ちだったかを思い出し、書き出します。その出来事が良かった、
悪かったといった評価はせず、事実だけを書いていきましょう。
空欄があっても構いません。
🔘 自分にとって、大きな出来事だったと思うところに色を付けます。
そのときの気持ちを思い出し、その経験が、自分に何をもたらして
くれたかを考えてみましょう。
🔘 一度にすべての答えがでるわけではありません。日をあけて、家事の
合間にでも、気にかかる出来事を反すうして考えてみてください。
「このとき、どういう気持ちだったかしら?」など自問自答し、自分への
理解を深めていきます。
もし、ご自身の中で気持ちの整理がついているのならば、大きな出来事の
他に、つらかった経験や、自分の至らなさを思い知った出来事を振り返るのも
よいでしょう。
ワークを通じて、自分の成長に気が付いた
私自身、50歳の頃にこのワークを行い、そんな日々が自分を成長させてくれたことに
気付きました。前回もお話ししましたが、私は子どもを産んだ後、夜泣きに
悩まされました。子どもは愛しいけれど、寝る時間が減り、家のことも仕事も
きちんとできず戸惑いました。でも今思い返すと、子どもが生まれる前の私は、
何でも自分の思い通りになると思っている、傲慢(ごうまん)な人間でした。
でもこの経験を通じて、ワガママな私から卒業していたのです。
「つらかった」「至らなかった」という思いを否定せず、次の同じ場面では
配慮ができる、新しい自分に出会わせてくれたと捉える。みなさんも、
こんなふうに考えてみてください。
ワーク2:今の人間関係を客観視する
経験は、人間関係にも反映されます。というわけで2つ目は、
人間関係を客観視するワークを行いましょう。自分を取り巻く人間関係が、
カテゴリー別にどういう状況なのか、その事実を客観視します。
🔘 円を描いて4等分し、「家族・身内」「仕事」「地域」「趣味・学び」の
4つの枠を作ります。
🔘 それぞれに、あなたの交友関係を書き入れます。よく会う人の名前は円の
中心付近に、めったに会わない人は外の方に記入します。円の中心から
線でつないで、完成です。
🔘 自分の人間関係が、どの枠に多く、どの枠に少ないのか、客観視します。
さて、どんな図が出来上がりましたか? びっしり埋まる枠と、スカスカの
枠があるかもしれませんね。このワークは、埋まった方がいい、スカスカは
だめと評価するものではなく、今のあなたを構成する人間関係を知り、
今後にどう生かすかを考えるために使います。
人間関係が多い枠を、自分が大事にしたい関係だと捉えて、今後もそこを
充実させていくと考えてもいいし、人間関係が少ないところを増やして
みようと考えてもいい。正解はないので、自由に考えてみてください。
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