人に対する見方を変えれば【生きるヒント】―2


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             人に対する見方を変えれば

                                          人付き合いはラクになる

 岡檀(おか・まゆみ)さんによる研究では、自殺希少地域にある

自殺予防因子として、前回で紹介した「病、市に出せ」と

「ゆるやかにつながる」の他に「人物本位」「多様性を重視する」という

ことも挙げられています。

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人を肩書きで見ないで人柄やその人の持つ力で見るということと、

異質なものや異端なものへの偏見を持たずに多様性の存在を認めると

いうことです。 私は旅に出たら、旅先で自分の職業のことは明かさないように

しています。「精神科医」のイメージは強いので、そこで知り合った人との

コミュニケーションには必ず「精神科医」というフィルターが入って

きてしまうからです。すると途端に、旅は楽しくなくなります。ところが、

自殺希少地域では私が精神科医という「異物」であると知られても、

彼らが態度を変えることはありません。「精神科の医師が来たよ」ではなく、

「森川さんという人が来たよ。精神科の医師なんだって」と捉えてくれますし、

人が多様であるのを知っているので、みんなと異なるものへの偏見も

少ないからだと思います。

 レッテル貼りがその人自身の人生を奪ってしまうことも

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医師はひとたびうつ病などと診断をすると、うつ病という病気に薬のみで

治療を行いがちになるということですが、逆に自殺希少地域に暮らす

人たちは人物そのものを見ることが上手です。 例えば、近所のおじいさんが

うつ病だとしたら、「うつ病のおじいさん」ではなく、「おじいさんがうつ病

なった」と捉えます。うつ病になる以前からおじいさんの人生はありますし、

その人生について周囲の人は知っています。 そして、おじいさんには

大切にしていることがあることも理解しているので、その人の背景に

注意を向けることができます。病気を見るのではなく、本人を見ることが

できれば、「何言っているの? がんばりなさいよー」などと声を

かけることができますし、「早く病院で診てもらいなさいよ」と言う

ことまでできてしまうようです。

"その人のため"ではなく"自分"がやりたいからと考えてみる

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自殺希少地域の一つ、東京都の神津島(こうづしま)に

フィールドワークに行ったときのことです。洋菓子店を訪れると、お店には

1個250円のおいしそうなケーキが並んでいました。「安いですね」と

話しかけると、「これくらいにしないと売れないんだよ。食べていくのに

精いっぱい」とお店の方は答えます。そしてその後で、この洋菓子店を

すすめてくれた雑貨店に戻ると「どうだった?」と聞かれました。

「安かったです。でも経営は厳しいそうです」と伝えると、

「そう。とてもおいしいのよ。だからみんなで順番に買いに行っているの」と

答えます。周りの人たちが心配して買い支えている面もあるのかなと私は

感じましたが、ケーキを買いに行っている島の人たちは自分が

そうしたいからするのだと言います。 神津島では、その人がその人らしく

生きることが大切にされていて、相手を変えようとしませんし、

変えられないこともよくわかっているように感じます。

他人はわからないものだからこそ、踏み込むことができる

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ここまでいい面を紹介してきた自殺希少地域も、決して「天国」と

いうわけではありません。数は少ないですが、自殺で亡くなる人はいますし

問題も起きます。 それでも違いを感じたのは、自殺で亡くなる人が

いた場合、家族を訪ねて自殺に至った背景を確かめに行ったりする人が

いるところです。触れてはいけないものと思ってそのままにすると

いうことをせずに。 自殺希少地域の人たちは、人は多様であることを

知っているので、他者と接するとき、「他人はわからないもの」という

前提に立っています。だから知ろうとするし、何かが起こった場合、

その起こったことを決まった見方で片付けることをよしとはしないのだと

思います。また、その上で自分ができることを探しているようでもありました。

              人間関係をたくさん経験すれば偏見・

                                                 肩書きで人を判断しなくなる

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どうすれば、人物本位の視点を持つことができて、いろんな人がいていいと

考えられるようになるのでしょうか。自殺希少地域のフィールドワークに

行くと、いろいろな人に話を聞きます。もちろん、その話の中には近所の

人の陰口や悪口もないわけではありません。でも、それがヒートアップして、

陰湿な、いじめに発展することはない印象を受けます。

どの程度まで言えるものなのか、何度も試してきたことで加減を

知っているのでしょう。人との上手な距離のとり方は人間関係を

たくさん体験することでしか得ることはできないからです。

夫を亡くした80代の女性がいました。今まではご主人と二人の

世界だったので、孤立しないようにと自殺希少地域の話を紹介しました。

彼女はさっそく実行しました。初め、60代・70代の人たちの集まりに

参加したら、「若い人とは意見が合わない」と言いに来ました。でもその後、

夫を亡くした自分のことを心配してくれていた人に出会ったり、

同じように孤立している人とも知り合ったり、積極的に人と接することで、

さまざまな体験を積むことができ、人と話をしたからこそ、

「意見が合わなかった」体験も含めて、「多様な人々」を知ることが

できたと言います。そして今、その女性は孤立せずに暮らしています。

自殺希少地域は「対話」を大切にしている

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自殺希少地域を回っているのと同じ頃、私は「オープンダイアローグ」と

いうものと出合いました。とにかく精神の病とともに生きる人の話に耳を

傾けるというフィンランドの心のケアの取り組みです。

そこで行われていることは、偶然にも自殺希少地域で実践されていることと

通じるところがあると感じました。彼らが大切にしていることは「対話」です。

対話とは人の話を丁寧に聞き、自分の話を丁寧にして、話すことと聞くことを

丁寧に重ねていくことです。オープンダイアローグでは、心の病のきっかけと

なるようなことを含めて、問題は人と人の間に起こるものと考えます。

だからその問題を解消するために、丁寧に対話を続けていきます。

他者を認め、理解するための5つの心構えと行動

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心構え1:人物本位

行動:人を肩書きで見ない
人にレッテルを貼らないようにしましょう。レッテルを貼ると個人と

向き合わなくても物事が進むこともあって効率的ではありますが、

人の本質を見ることができなくなってしまいます。肩書きを取っ払い、

その人自身を見ましょう。

心構え2:相手は変えられない

行動:山や海へ行く
山や海や森など自然を前にすれば、自分ではどうにもできないものが

あることを体感します。相手は変えられない存在だと認識できれば、

変化するのは自分の方だと考えやすくなるでしょう。

心構え3:いろんな人間関係を経験する

行動:愚痴、悪口も言ってみる
極端ですが、悪口を言うのも一つの経験です。そこでどんなことが起こるのか。

成功も失敗も経験を積むことで、自分がどうされたら嫌か、これ以上やると

相手がつらいことになってしまうとか、加減がわかるように

なっていくでしょう。ある日、私のクリニックで前向き発言禁止、愚痴しか

言ってはいけない会議というのを試してみました。その後、互いの関係性が

とても良くなった体験をしました。

心構え4:みんな違っていい

行動:新しい集団にも参加する
いつものグループではないところに参加すると、自分とは意見の違う人に

出会う可能性が高くなります。最初は居心地が悪いかもしれませんが、

それを続けるうちに自然と違いを楽しめるようになるかもしれません。

相手を通して自分のことをより理解できるようになる機会も増えます。

心構え5:相手を知りたい

行動:対話をする
対話とは他人の話を丁寧に聞き、自分の話を丁寧にすることです。

対話をすることでいろんな考え方があることを知り、人生経験が

豊かになっていきます。人は多様であることを実感し、その違いを

受け入れやすくなるでしょう。

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【柔軟と ガンコがぶつかり 孫の勝(シルバー川柳)】