食事や運動も原因に?
心の病気の可能性も
「最近、なんだかやる気が起きない……」とお悩みではありませんか。
この記事では、やる気が起きない人の心理・脳の状態や、やる気が
出ないときの対処法を解説。また、やる気が出ない原因となる
心の病気についても説明していきます。
やる気が起きない人の心理・脳の状態とは?
やる気が起きないとき、人の心理や脳はどのような状態に
なっているのでしょうか。脳科学や精神医学の観点から解説していきます。
やる気スイッチ「淡蒼球」が活性化していない
その働きから、通称“やる気スイッチ”と呼ばれます。淡蒼球から信号が
送られることで、やる気やモチベーションが湧くという仕組みなので、
「やる気が起きない=淡蒼球が動いていない」状態と言えます。
ドーパミンの分泌量が低下している
やる気を左右しているのは、脳内にある神経伝達物質「ドーパミン」の
分泌量です。このドーパミンは、側坐核(そくざかく)から分泌される
物質で、食べ物に含まれるアミノ酸の「チロシン」や「フェニルアラニン」が
合成されて作られます。 ドーパミンが大量に分泌されると、やる気が
ある状態となり、反対にドーパミンの分泌量が低下していると、やる気が
起きない状態になります。
神経伝達物質のバランスの乱れ
ドーパミンの他にも、戦うためのホルモンともいわれる「アドレナリン」、
幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」などの神経伝達物質のバランスが乱れると、
やる気が起きない状態になりやすいと言われています。
神経伝達物質のバランスが乱れる原因は以下の通りです。
- 過度なストレス
- 疲労の蓄積
- 自分にとって好ましくない状態が続く
やる気が起きないときにありがちな状態
続いて、やる気が起きないときの思考・行動パターンを説明していきます。
何からすればいいのか判断できない
やるべきことが多すぎると、頭の中が散らかっているような状態になり、
何からすればいいのかわからなくなります。また「あれもこれも
やらなければ」と手当たり次第に手をつけ、すべてが中途半端になってしまう
ケースも見られます。
目標やメリットが見い出せない
仕事や家事など、具体的にやるべきことはわかっていてもやる気が
起きないときには、その作業にメリットを見い出せていないからかも
しれません。目標や魅力が見い出せないのは、前向きな意欲が低く
なっている、要注意サインです。
苦手なことや人間関係など、避けたい要因がある
やるべきことが苦手なことだったり、周囲の人間関係が悪化していたりすると、
やる気が起きないことがあります。例えば「過去の経験で苦手意識を持ち、
クレーム対応が億劫になる」、「嫌いな相手と仕事を
しなければならない」などです。人はやりたくないことをやらなければ
いけない状態に置かれたとき、強いストレスがかかります。
すると憂鬱になり、やる気が起きない状態になるのです。
睡眠不足・食生活などによる健康状態の悪化
心身の健康状態の悪化も、やる気が起きない原因の一つです。昨今よく耳に
するようになった「睡眠負債」も、やる気と関係しています。睡眠の質が
悪いと自分でも気づかぬ間に睡眠負債が蓄積して、やる気が起きない状態が
続いてしまいます。 また、食事の内容も健康状態に影響します。
セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を作り出す「タンパク質」や、
脳の働きに必要なエネルギーとして多く消費される「ビタミンB群」などが
不足すると、やる気が出ない原因になります。
やる気を出すためにできること
やる気が起きない理由がわかったところで、いよいよ、具体的にやる気を
出す方法を解説していきましょう。
やる気スイッチ「淡蒼球」を活性化する
淡蒼球は自分の意志では動かすことができませんが、
以下のような行動をすることで活性化できます。
- 体を動かす
- いつもと違うことをする
- 報酬(ごほうび)を与える
- やる気がある自分になりきる
食事・睡眠・運動で神経伝達物質のバランスを整える
心身を健康に保つことが、やる気を出すための第一歩です。日頃の疲れや
ストレスを食事・睡眠・運動で取り除きましょう。
食事のポイント
まずはバランスのいい食事を心掛けること。その上で、ドーパミンの生成に
必要なアミノ酸「フェニルアラニン」や「チロシン」を含んだ食べ物を
摂取するのがおすすめです。また、脳の疲労を回復する「ビタミンB12」も
積極的に取りましょう。
それぞれの栄養素を多く含む食べ物には、以下のようなものがあります。
睡眠のポイント
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」には体の疲労回復や記憶力・集中力と
意欲を高める働きがあるとされています。しかし、睡眠の質が悪いと
成長ホルモンの分泌も悪くなってしまいます。
質の高い睡眠をとるためには、以下のことを心掛けてください。
- 自分の体格に合った寝具を選ぶ
- 日中に体を動かし、寝る前は静かに過ごす
- 寝る前にはスマホやテレビなどは見ない
運動のポイント
神経伝達物質の「セロトニン」は、精神の安定や脳を活発に働かせる
物質です。セロトニンの分泌を促すために、日光浴や有酸素運動の効果が
あると言われています。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどを
習慣化しましょう。
やるべきことを紙に書き出してみる
何からすればいいのか判断できないときにおすすめなのが、紙に
やるべきことを書き出す方法です。
タスクを書き出すときには、以下のことを書くようにします。
- やること
- いつまでにやるなどの期限
- 優先順位
そうすることで頭が整理され、未来や結果へのいいイメージを
持ちやすくなります。
苦手なことも少し手を付けてみる
ドイツの精神科医エミール・クレペリンが発見した「作業興奮」という
作用を利用するのも手です。気が進まない作業でも、まずは
取りかかることで徐々に気分が乗って、やる気が出る状態のことを
いいます。「5分で終わる範囲で片付けをしてみる」「パソコンで文字を
打ってみる」など、少し手を付けてみてください。徐々にエンジンが
かかってきて、いつの間にかやるべきことが終わっていた、
30分経過していた、というふうになるはずです。 また、体を動かすことで
脳にある側坐核に刺激が与えられ、ドーパミンが分泌されます。本格的な
作業に入る前の準備運動のような感覚で体を動かしてから、少しずつ
作業に手を付けてみましょう。
やる気がないときにやってはいけないこと
一方、やる気がないときに、やってはいけないこともあります。ストレスが
かかることで、メンタル不調を引き起こすなど、ますます良くない
状況になるためです。
自分を攻めるマイナス思考
やる気がないときにやってはいけないのが、自分を責めることです。
できない自分を「ダメな人間だ」などと責めると自己肯定感が低下し、
マイナス思考に陥ってしまいます。やる気が起きないときは誰にでもあり、
決して悪いことではありません。自分を責めず、自分に
やさしくしてあげましょう。
感情に任せて転職など重大な決断をする
やる気が出ないときは、メンタル不調を引き起こしている可能性が
あります。集中力や決断力が鈍っているため、転職や離婚などの重大な
決断は避けた方が無難です。
周りの人と自分を比較する
やる気が起きないときに、周りの人と自分を比較することは控えましょう。
周りの人がよく見えたり、羨ましいと思うことで自己嫌悪に陥ることも。
やる気がないときには、できるだけ周囲が気にならないような
工夫を心掛けてください。
やる気がない原因が心の病気である可能性も!
心の病気が原因で、やる気が起きない状態になっている可能性もあります。
「コロナうつ」や「春バテ」、自律神経失調症に注意
代表的な心の病気に「うつ病」があります。うつ病の症状の一つに
意欲低下や、興味や喜びの喪失があります。最近は、新型コロナウイルス
(COVID-19)の感染拡大によるストレスやライフスタイルの急激な変化が
原因でうつ病を引き起こす「コロナうつ」にも注意が必要です。
また、自律神経失調症でも、やる気が起きない症状が出ます。特に春は、
環境の変化や異動などによってメンタルに不調が出る「春バテ」になる人が
多いと言われています。やる気が起きない状態が続くようであれば、
専門家に相談しましょう。
ADHDなど発達障害が原因の場合も
特に憂鬱ではないが、なぜかいつもやる気が起きないという人は、
ADHD(注意欠如・多動症)など発達障害の可能性もあります。
ADHDとは、落ちつきのなさや不注意・衝動性などが生活や仕事、
学習に悪影響を及ぼし、その状態が6か月以上持続していることをいいます。
発達障害といっても、子どもの頃ではなく、大人になってから気付くことも
あります。大人のADHDの場合、やる気に関して、以下のような特徴が
あるとされています。
- 結果がすぐに出ない事柄にはやる気が出ない
- 新しいことに興味を持つが、同じことの繰り返しにはやる気が出ない
- 何からすればいいのか考えているうちに、やる気がなくなる
ADHDの人は、脳内の情報を運ぶ神経伝達物質がうまく働かないため、
本人の気持ちに関係なく、やる気が起きづらい状況である可能性があります。
うつ病や自律神経失調症、発達障害はどれも、専門医がカウンセリングで
本人の周囲の環境を聞き、心身のさまざまな症状なども踏まえて
診断する必要があります。やる気が起きない状態が長引く場合には、
病院の受診をおすすめします。
やる気が起きないときは無理をせず、心と体を休めて自分をいたわって
あげてください。そして、できることから少しずつ物事に
取りかかってみましょう。
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