和子のこぼれ話-76〜母の危篤-2〜

「母危篤」の連絡を受けて田舎に帰って来た時は、もう既に「かーこ」と
呼んで呉れる元気は有りませんでした。聞く所に依ると心臓から離れた
箇所から人間は冷たく成ると言われますが、母は和子が帰った時は未だ
苦しそうな荒い息をして居ましたが、両手・両足は氷の如く冷たく手のひらは
グローブの様に大きかったです。


次の日は君子の家では長男(宏明)の結婚の準備で家の隣りに隠居を建てる
棟上げの日でした。87歳と言う高齢の母の死よりも其々に生活が有るから
君子は「お母ちゃんせめて棟上げが終わる迄死なないでね?」って・・・
その日の朝、みんな家族は居間で食事を・・・和子は隠居で母の傍に居て
「お母ちゃん・お母ちゃん・・・」と呼んでも相変わらず返事は無い?
お水を口に入れて上げると未だその時は飲んで居た〜すると・・・いきなり
大声で「おかあ〜・おかあ〜・あにやん・あにやん・・・」って自分の
亡き母と兄貴を呼んでいる。「お母ちゃん、兄ちゃん呼んでやろか?」というと
「水呉れいやい?」と・・・此れが最後の言葉でした。


「未だ水を含ませれば飲むし・・・今日は君子の家の棟上げだから和子は
君子の家に手伝いに行って遣れ〜」って兄貴に言われ・・・
母は姉さんが見る事で・・・君子のお宅にお手伝い・・・