和子の生い立ち-45〜大輪の菊〜

洋一に失恋した事を旦那様に話した記憶は有りませんが、
和子の心の痛みを察して下さって大津の紅葉パラダイスに連れて行って
下さった旦那さまを思うと「私の夢も破れたし山中家を退職します」とは
言えず、約束通り一年頑張る事に・・・


秋に成ると親奥さまの丹精込めた大輪の菊が見事に咲きます。
朝早くから起きて「コップに一杯の水遣り」を欠かさず遣る
オジサンが朝の水やりで受け皿に垂れた水が溜まって居ると怒られ
菊の葉っぱが萎れ垂れ下がって居ると怒鳴られながら育ては大輪の菊の
お披露目・・・玄関から門までの両脇に数十鉢、中庭に数十鉢
色々な品種の菊が並べられます。表玄関は道行く人が足を止めて
眺める人も少なく有りません。こんな時は、親奥さまも鼻高々・・・
ご近所の人たちも「煩い婆さん」と心得て居るからお世辞が上手い・・・


有る朝、表玄関を掃いて居ると一人の男性が菊を眺めて居ました。
「見事ですね?一寸見せて下さい」と・・・
和子は思わず「裏にも小菊が綺麗に咲いてますよ〜」と言ったは良いけど〜
(しまった〜親奥さんに怒られる〜〜〜)と思い付き親奥さまの所に
飛んで行って「『菊を見せて欲しい・・・』って言われました」と言うと・・・
「良いよ〜奥に入って小菊も見せて挙げなさい」と快く受け止めて下さって
親奥さまは出て来て色々説明して居ました。
和子は(良かった〜〜〜怒られずに済んだ〜〜〜)と胸をなで下ろす
心境でした。