和子のこぼれ話-119 〜息子の引っ越し?〜

洋光台の市営住宅に入居して20数年、夫は中小企業の会社でお給料も低く
和子は到底収入オーバーで追い出される事等微塵も考えて居なかった。
到底マイホームなどは夢の又夢で、洋光台の団地で一生を終えるものだと
思って居なかった。でも〜段々とご時世も厳しく、あの家も引っ越し
この家も引っ越しと・・・と出て行くお宅も増えて来たけど〜負けん気の強い
和子も流石にマイホームだけは手の届かない存在だったから別に羨ましく
無かった。只、2人の息子も大学に入り、やっぱり大学出た彼女が出来たら?と
ちょっぴり、気に成る様に成った。その頃、長男は大学に入り、サークルの
仲間とお付き合いを初めて居るらしく、時々彼女らしい女性から電話が
掛って来る様になった。そんな時(誠の彼女は立派なお宅の娘さんだろうに〜
誠は市営住宅は一寸可愛そう?)と思ったけど、マイホームには到底手が
届かず、せめて襖だけでも張り替えて・・・と日曜日に成ると夫のご機嫌を
伺いながら、2〜3枚づつでも襖を張り替えて・・・
2人の息子も大学を卒業して長男は社会人に成って6年、次男も社会人3年
親子4人の収入で、数年前から「高額所得者」で家賃は最高額でしたが、
万が一「空け渡し」の通知が来たら和子もお勤めを辞めて2人の息子も
何処かにアパートを借りて夫の収入だけに・・・と覚悟はして居た。


そんなある日、親子で夕食を食べて居る時、長男から「俺、アパートを
借りて出て行くよ〜」と・・・その時は左程ピンと来ないから「そ〜?」
と軽く聞き逃して居た。「お母さん俺、出て行く時にはステレオを
持って行くよ〜」と言うから・・・「家にも無いと困るからじゃ〜ステレオを
買いに行こう?」とステレオを買いに行ったり、「新子安にアパートの
契約をして来た」と・・・愈々出て行くの〜〜〜?