和子のこぼれ話-78〜母の死〜

和子は君子の家の棟上げの為に帰って来たのでは無く母危篤の知らせで
帰って来たんだけど〜人生87年を全うし、2〜3年前からお漏らしを始めた
母の傍で付きっ切りで涙を流す我が子も無く其々に所帯を持って居ると
母の死で泣いてる暇も無いと言うのが現実かな?


何時息を引き取るか判らない母の姉さんに預けて末っ子の和子も君子の家に
駆り出され、棟上げの職人さん達の接待に慌ただしく動いて居ました。
兄貴も、兄ちゃんも正雄さん(長女の夫)も手伝って・・・
ふと見ると兄貴の姿も兄ちゃんの姿も無い?皆さんが食事を始めた頃に
「かーこ〜わし(僕)が送って遣ろう?」って正雄さんが車で実家まで・・・
母は相変わらず、荒い息をして苦しそうでしたが、眠って居ました。


夕飯の時間に成り交代に母を見ながら食事、食事の済んだ者はみんな母の
枕元に・・・8時・9時・・・と時間が経つにつれて母の呼吸は段々と激しく
一分間に数回、其れはそれは苦しそうでした。
和子が君子の家にお手伝いに行ってる間に夫も子供達も帰って来て呉れて
居ました。兄貴は仏壇から鈴を持って来て・・・母の息が切れると同時に
鈴を叩くのですが、荒い息で「もう叩こうか?もう叩こうか???」「未だ
もう一回・もう一回・・・」と・・・夜10時15分遂に母は旅立ちました。
その瞬間、「お母ちゃん、苦しかったね?やっと楽に成ったね?」と言う
思いでした。
隠居から座敷に安置された母は気持ち良く眠って居るようでしたが・・・
和子は、棺に納められてからも(お母ちゃんは又荒い息をして居るのかな?)
何て思い何度も棺を開けて覗いた物でした。
母は享年87歳でした。